ライフハック・ジャーナルにようこそ! このニュースレターはもともとnoteの定期購読マガジンとして連載していたのですが、このたびSubstackへと移行することにしたものです。
そこで今回は、 noteで書いたことと一部重なるのですが、初めて購読される人のためにSubstack がどのような特徴をもっているサービスなのかについて解説するとともに、どんなひとが利用するのがよいのか、note の定期購読マガジンの代替になるのかといった話題について紹介したいと思います。
Substack はブログのように読めるニュースレター配信サービス
Substack は基本的にはニュースレター・メルマガを配信するためのサービスです。読者はメールアドレスを登録することで受信箱に直接記事がHTMLメールとして届くようになります。
有料の定期購読型のニュースレターも作成することができますので、独立したジャーナリストが新興メディアを立ち上げるプラットフォームとして英語圏でこの2年ほどで急成長してきました。
しかしSubstackの面白いところは、記事を受信箱のなかでだけでなく、ブログのようにブラウザ経由で読むこともできる点です。
それぞれのSubstackはブログのようなページをもっていますので、無料で配信されている記事については誰でも登録せずに読むことができますし、有料購読をしている場合には鍵付きになっている記事についてログインしたうえで読むことが可能になります。
また、Substack 上で収録したポッドキャストを公開し、iTunes / Spotifyに向けてRSSを配信することも可能になっています。
ブログとSubstackの違い
Substackはメルマガ配信サービスですので、更新は読者のもとにメールで届きます。ですから、これはブログやnote の代わりになるサービスでは「ない」ことは強調しておく必要があります。むしろ固定の読者をもっている書き手が、読者とより直接的な結びつきをもつための仕組みなのです。
その一方で、ブログ的な側面ももっているところが、Substack の面白いところでもあります。それを図で説明すると以下のようになります。
通常のブログはこのように、SNSや検索エンジン経由でやってきます。それは基本的に「発見」のメカニズムで、膨大な数のブログ、ウェブメディア、SNSの投稿、YouTubeの動画、TikTokの投稿などと読者のアテンションを争奪している状態にあります。
SNSのフォローやRSSのように、固定の読者がそのブログ・著者を必ずフォローして追うための仕組みもありますが、Google Readerが閉鎖されてからというものずっと、この側面は弱まっています。
もし固定の読者がいて、そのひとびとに直接コンテンツを届けたいと思うときに、メルマガ、あるいはSubstackのようなサービスは生きてきます。矢印の方向に注意すると、ブログは「読者がやってくる」場所であったのに対して、メルマガ・Substackは当然「直接届ける」方向の矢印になっています。
しかしSubstackにはブログ的な側面もありますので、SNS 経由・検索エンジン経由で新しい読者が発見する余地も残されています。
この、ブログ的な側面を残したニュースレターという点が、私がこの仕組みを試してみようと考えた理由です。
また、無料記事と有料記事を両方掲載できるので、Substack ではブログのようにパブリックな記事と、有料で固定の読者にむけたプライベートな記事を並行して掲載できるというメリットもあります。
The withering email that got an ethical AI researcher fired at Google | Platformer
たとえば先日Google のAI倫理部門の研究者が論文の発表を社内で禁止されたことに抗議して離職した事件について、最初にスクープを報じたウェブメディア Platformer は元Vergeの編集者が運営しているSubstackの無料記事でした。
一方、この件についてのより詳細な考察が掲載されている続報については有料購読者むけの限定公開の記事になっていて、文体も前者は誰にでも読まれることを意識したジャーナリスティックな文体、後者は固定読者にむけた親しみのある文体で使い分けられています。
無料ページが通常のブログのように発見されて読者数が成長することを仕組みのなかに残しつつ、パブリックとプライベート、無料と有料とで傾斜させたコンテンツを一箇所にまとめられるのがSubstackのメリットといっていいでしょう。
note の定期購読マガジンから移行する意味
note / Cakes で炎上事件が続き、ひょっとすると運営はサイトの成長だけに集中していて、クリエイターや書き手を尊重していないのではないかという疑いが強まったことで noteユーザーの一部で移行先を探しているという話題があります。
noteに当初から記事を書いてきた私も、期待がずっと空回りし続けていることを残念に思っているユーザーの一人です。
これはあくまで個人的な偏った意見であり、一般論にできるかは議論があると思いますが、私は現状の noteについて以下のような不満点をもっています。
noteのなかでnote記事が発見される仕組みが弱く、Twitterやはてなブックマークなどnoteの外側でバズるか、運営・運営側インフルエンサーにシェアされなければ拡散されない
特にTwitter経由でなければなかなか閲覧数が伸びないのは、note自体がユーザーのソーシャルグラフに依存していて、いわばフォロワーの多いバズをもたらすユーザー頼りなのではないかという懸念がある
過去の記事が必ずしも資産になっておらず、情報のストックを置く場所としてのメリットが薄い
記事をエクスポートすることができず、リスクの高い状態が何年も続いている
ページのデザインが悪く、コンテンツも箇条書きが利用できないなど機能が低い状態が続いている
Mediumなどはここ数年デザインが洗練されるだけでなくアルゴリズムを使った情報のキュレーションもだいぶ進化したのに対して、noteのタイムラインがかなり貧弱になっていて、エディタも不便なままなのが特に残念でした。
一方、独自ドメインやブログなどをもたなくてもアカウントを作成してすぐに記事を書けることは一般的なユーザーにとってはとても重要なメリットで、現状ではnote以外にそれに対応できるプラットフォームは少ないといえます。
記事の有料化も、Substackでは月額・年購読の課金にのみ対応しており、noteのような記事単位の課金や投げ銭的な運用には対応していません。もしこうした機能が重要ならば、現時点で移行は難しいでしょう。
ただし、note で定期購読マガジンを運用しているひとならば、Substack に移行する意味は大きいかもしれません。
そうした書き手はすでに別の形で読者を獲得しているケースが多く、定期購読マガジンだけを運用しているというケースはそこまで多くはないはずです。そうした人は、わざわざnoteをブラウザかアプリで開かないと読んでもらえないメディアを運用するよりも、メールの受信箱に直接届くメディアを作る意義は大きくなります。
現状、通常のnoteユーザが移行を希望する場合は、はてなブログやWordpress.comといったブログASPを利用するか、独自にレンタルサーバーなどにブログを立ち上げる形になるかと思います。
そして定期購読マガジンを運用していた人は、ブログなどのパブリックの場所をもちつつ、読者と直接つながるためのSubstackをつくってみるのも良いかもしれません。
ただし、Substackは現状日本語化されていませんので、いくつか不十分な点があります。
たとえばメニューやUIの一部は英語のままですし、システムが送信するメールの一部も英語のままです。このあたりをカスタマイズしたい場合は、Mailchimpといったサービスを使うほうがよいでしょう。
課金については、SubstackはStripeを利用していますので、クレジットカードやスマートフォンからアクセスした場合にはApple Payといった方法で有料購読を始めることが可能です。ただし、日本におけるそのあたりの手続きはまだ未知数な部分がありますので、今後調べていきたいと思っています。
ライフハック・ジャーナルについて
というわけで、note の定期購読マガジンから移行してきたこのSubstackでは、わたしの個人ブログLifehacking.jpの読者、わたしの著作の読者にむけて、よりマニアックで親密なコンテンツを配信しようと思っています。
テーマは「読み、書き、考えたい人のためのニュースレター」を考えています。
「読むこと」については、私の読書とその視点についてをエッセイとして月に一度程度の頻度で。「書くこと」については本であれ、ブログであれ、SNSであれ、いま何を書くべきかという問題と、どのようにして書くべきかという技術の問題について。そして「考えること」については、私がいま考えていることについてのエッセイ、悩んでいることについての報告などといったものも含め、わりと答えの出ない問題についての文章を書いてゆく予定です。
Lifehacking.jpで知的生活・知的生産といった話題について興味のある人には、面白く読めるメディアを目指しています。
いずれ、Substack の有料購読についても挑戦したいとは思っていますが、まずはこの仕組みについて学びたいですし、準備も必要ですので2021年4月までは無料のニュースレターとして毎週一度〜二度程度の更新を行う予定です。
日本ではまだSubstackでメディアを作っている人はあまりいませんので、そのあたりのノウハウも紹介できればと思います。
まだのかたは、ぜひ登録をよろしくおねがいします。
注意!
現時点で日本語に特有な問題なのかわからないのですが、SubstackからのメールはGmailのスパムフィルターで迷惑メールに判別されることが多い傾向があります。
アプリでみるとこのような感じですね。
日本人の作成したSubstackだと頻度が多いものの、一部の英語圏のものも判別されているケースがあります。
もしこうしたケースに引っかかった場合は、「安全なメール」をクリックした上で「迷惑メールではない」を選択してGmailに記憶させるようにしてください。おそらく、数回のうちにはGmailのフィルターが記憶するようになると思います。
これについては私の側の設定でも改善できないか、調査を続ける予定です。
ライフハックジャーナルそのものもとても楽しみにしていますし、substackでの展開も楽しみにしています!
私の環境ではライフハックジャーナルからのメールは最初からパソコンでもスマートフォンでも迷惑メールの警告はでませんでした。以前に他の substack のメールを購読しているかどうかによるかもしれません。迷惑メールに振り分けられてしまった場合も「安全なメール」指定し、Gmailの「重要マーク」を一度つけると、次回からちゃんと見られるようになります!
来年1月8日より、substack on というオンラインイベントがあるので、ここからも「読む・書く・考える」の要素を伝えていただけるとうれしいです! https://substack.com/on